渚のさむらひ 三人ヲトメ
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


        




この夏もまた、半端ない酷暑に見舞われている日本で。

 「所謂“地球温暖化”の進行のせいでしょかね。」
 「まずは亜熱帯化。」
 「そうですよね、それはもう根付いているのかも。」
 「ヤダなぁ、暑いのは苦手だ。」
 「あ、でも寒いよか ミニスカートは履きやすいんじゃあ?」
 「う…。」

そ、それはそうかも知れないけれど…と、口ごもった白百合さん。
お顔のみならずの、水着の胸元の上へちらりと覗く白い肌へまで、
大きな色濃い陰を落としている、
大きめの帽子の広いツバの端をちょいと摘まんでから、

 「でもでも。
  忘れましたか? ヘイさん。
  去年もなかなか涼しくならなくて、
  10月の半ばを過ぎるまで
  秋物のファーのついたあれやこれやがなかなか着れなくて、
  つまんないって言ってたじゃないですか。」

 「あー、そんなこともありましたっけねぇ。」

でも、そういう“流行”って業界が言い出すんですよね。
商品が間に合わなくなると困るんで、
これが流行(はやり)だよ、乗り遅れるなって押し出して、
モデルにも着させるわ、雑誌にも特集させるわして…なんて。
どこか悟ったような言い回しをしている ひなげしさんなものの、

 「そんな言うが、いつも“いの一番”に情報を集める。」
 「…悪ぅございました。」

バイトのボーイさんが運んで来てくれたスムージーは、
そんな平八が“今年の流行らしい”と、浜茶屋のおじさんたちへ提案したトマト味。
こっそりとニンジンも混ぜてあり、
さっぱり風味に甘みも加わってなかなかの逸品と、売れ行きは好調だそうな。
それを憎まれと一緒に紅ばらさんが差し出したのへ、
むむうと頬を膨らませたものの、
すぐにも相好を崩してしまい、
ウッドデッキへ並べられた、デッキチェアの上で大きく背伸び。

 「気ン持ちいぃい〜vv」
 「本当にvv」
 「………。(頷、頷vv)」

三人娘が向かい合うのは青々とした太平洋であり、
ビーチパラソルじゃあもどかしいと、
やわらかなつばの広い麦ワラ帽子をめいめいにかぶっての、
悠々とした日光浴と洒落込んでいたものの、

 「…う〜ん。潮風がある分には涼しいかもですが。」
 「うんうん。なんかちょっと、やっぱり。」

優雅な日光浴に、何か感じるものありというの、
それでも言葉を選んで口にしかかってたお友達二人を代表し、

 「暑い。」

久蔵がそりゃあくっきりと言い放ったもんだから、
あはは…と残り二人が苦笑で追う。
あとでもう一回、海へつかって来ましょ、そうしましょと、
きゃっきゃという軽やかな笑い声が、それは楽しそうに弾んで



  今年も半端ないぞ、日本の夏。



      ◇◇◇


夏といやの七月中盤からどころじゃない、
まだ六月だった頃合いから、
途轍もない暑さがお目見えしていた今年であり。
その辺のところを、
お話の出だし、専門用語(?)で“枕”に書きまくりだったこの夏で。
さすがにお盆を過ぎたとあって、
秋雨前線が頭上よりも北の位置にまで上がって来れば、
何とか涼しい風も吹いて来るらしい今日このごろではありますが。

 「でも、今年もまた残暑は厳しいって話じゃないですか。」
 「そうそう。
  九月中は昨年並みのとんでもない暑さを覚悟した方がいいって。」
 「〜〜〜。」

  ああそうだった、久蔵も暑いの苦手なんでしたね。

  でも、水泳はお上手ですものね。
  シュノーケリングやダイビングまでこなされてvv

  だが、ボディボードは…。

  そうそう、ヘイさんの独壇場でしたよねぇvv

  えへへぇvv ウィンドサーフィンも得意ですよvv

その辺もアメリカ仕込みか、あくまでも悪びれずに肯定し、
続けてえっへんと腰に手を当て、ポーズを取る平八なのが愛嬌たっぷりで愛らしく。
そんなお嬢様がたの、お茶目なお喋りの内容までは届かぬが、

 「う〜ん、やっぱダントツじゃね?」
 「だよなぁvv」

都会から来ておいでのお客人、
そりゃあ おきれいな女子高生三人には、
当地の網元さんの私有地内、
プライベートビーチの中だからおいそれとは近づけないものの。
周囲からの視線が、ついつい集まってしまうらしいのも無理はない。
生まれ持っての風貌の整いようにくわえて、
髪にも肌にもケアを怠らない努力の賜物、
十代だからというだけじゃあ収まらないほどに瑞々しい、
水蜜桃のような蠱惑をたたえた三人のお嬢さんたちは。
此処へとおいでになった当初から、
地元のお人も観光客も引っくるめ、注目の的、話題の的であるらしく。
タイプも三者三様という個性派ぞろいであるがため、

 「俺はやっぱ、あの青い眸で金髪のお嬢様かな。」
 「そーだな。品があって、笑い方も優しいしな。」
 「スタイルも抜群じゃんvv」
 「そっかぁ? 何か近寄り難くねぇか?」
 「けどよ、世話焼くのも上手だぜ?」
 「そうそう。
  第一、それ言ったら赤い眸の子なんて、
  どっかの女王様みてぇで むしろおっかねくね?」
 「そーだよな。
  あんま笑わねぇし、眸なんかこ〜んな吊り上がってるしよ。」
 「そこが良いんじゃんかvv キロッて思い切り睨まれてぇ…vv」
 「ヒデはMだから放っとけ。」
 「何をぉ。」
 「俺はやっぱり、あの赤毛のお嬢様かな。
  よく笑ってて明るそうだし、泳ぐのも上手いしよ。」
 「それに凄げぇグラマーだもんなぁvv」
 「テル、よだれ出てんぞ?」
 「うっせぇなっ!」

先日、ホテルのプールでお披露目したのとはまた別の、
海ならこう来なくちゃチョイス、
ワンピースやセパレーツ、タンキニ風といったお好みの水着…と、
紫外線防止と一応の男除け、
それぞれの保護者様たちからお守りがわりに押しつけられて来た、
ボレロやジレやパレオをまといつけ。
そりゃあ伸び伸びと、夏の海を満喫しておいでのお嬢様たちではあれど。


  ……このまま、穏やかに済むはずがないとか、
  何か事件が勃発してしまい、
  お嬢様たちったら性懲りもなく首を突っ込んで…
  なんてな、
  やや物騒な傾向の話はこびを期待し…げふんごほん
  そんなこんなを思っていませんか? そこのあなた。


    ぶぶー・はずれ


夏休みだってあと十日ほどを残すばかり。
お盆を過ぎた浜は 少しずつ静かになってゆくだけで、
彼女ら自身も此処への逗留1週間の最終日を明日に控えており、

 「あ、そうだ。宿題。」
 「数学の問題集は(任せろ)。」
 「やたっ♪」×2

 「英訳は後で答え合わせをしましょうねvv」
 「今年のは薄い本でよかったですよね。」
 「……。(頷、頷)」

 「古典の感想文は、源氏物語の須磨の巻でしたわね。
  原文の翻訳をしましたので参考にして下さいませ。」
 「助かりますvv」
 「……。////////(頷、頷)」

 「体験学習のレポートは、此処での民話収集でいいとしてvv」
 「え〜? あれを使いますか?」
 「そりゃあ、ヘイさんには苦手なネタだったかもですが、
  せっかく訊いて回ったのですし。」
 「……。(頷、頷)」
 「ううう…。」

ね? そりゃあ穏便に、あとは帰るだけという話題になっておいでだし。
逗留していたお部屋には、
お土産や手荷物以外のあれこれ、
こちらで着る機会のあった浴衣や着替えも含め、
段ボール箱に詰めての封も終えてあり。

 「あ、精密機械類は但し書きをしといた方がいいでしょか。」
 「それは…持ち上げれば判るんじゃない? 重いし。」
 「……ウチや シチんチの面々は(そのくらい常識の範疇だし)」
 「それよりも、久蔵殿、意外なものを買いましたよね。」
 「?? ああvv」
 「ああいう土産物って模造刀以下の出来で、強度なんてありませんのに。」
 「それがね、シチさん。
  此処のは堅い堅い樫の樹で作られてて、
  しかもちゃんと、原木は何年か乾燥させたり手間も惜しまずで。」
 「ええ? それは凄い。」


  きっとあれですよ、どこぞかのまんがで流行ったから。

  あれは北海道のじゃなかったでしたか?

  忍者や武将もブームだし。

  そうと言いつつ、久蔵殿、ばさらも むそうも苦手なくせに。

  〜〜〜〜。//////

  今に見てらっしゃい、お市殿。一人勝ちは許しません。

  ふっふっふっ、まつで掛かって来るとは笑止千万vv


  あああ、キリがないぞったら お嬢様たち。
  え? 微妙な発言が混ざってなかったか?
  ああ、すみませんね。
  実はもーりんは、最近のゲームは全くやったことなくて。
  ばさらも むそうも、
  どういうものかまでは知りません。悪しからずです。




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